陽炎1
昼間の幽霊・・・ そう呼ばれているのは知っている。
あんまりその通りなので、笑ってしまう。
滅多に出ないこの美術棟から、わざわざ授業時間に高等部の俺が、中等部の校舎に行くのを誰かが見たのだろう。・・・勿論、行きたくて行っている訳ではない。
最悪な気分であの男のいる理科倉庫のドアを叩く。あの男が俺をここへ呼ぶのは、普段人が来ない場所なのと、正規の授業にさえ出席しない俺をわざわざ出向かせる為だ。――俺は美術科の特待生だから、賞の取れる絵を描きさえすれば、授業なんか出なくても学園は文句を言わない。だから夏休みからずっと、作品製作の為と言って美術棟に泊り込んでいる。足が悪くて杖なしではまともに歩けないこともあって、余程の用事でない限り、姿を見せないことから、他の生徒から“仙人”とも呼ばれているらしい。その俺が、人目を忍んで出掛けるのだから、幽霊呼ばわりされるのは、当たり前かなとも思う。
男は俺を招き入れると後ろ手に鍵を閉める。
薄暗い中にお決まりの人体模型や、ホルマリン漬けのカエルや組織模型なんかが、埃をかぶって鎮座している様は、いかにもこの俺に似つかわしい。
俺はまるで検診か何かのように事務的に服のボタンを外し、ズボンを下ろす。男の指示で下着を着けるのを禁じられているので、すぐに全裸だ。嫌なことはさっさと済ませてしまえ!そんな気持ちが、あえて事務的な仕種を作り出す。手錠を嵌められ、流しの蛇口に繋がれるのにも抵抗はしない。男に尻を突き出した格好で、上体を冷たい作業台に預ける。男も至極事務的に、手術用のゴム手袋をはめている。
←来訪記念にポチッと頂けると励まされます。
あんまりその通りなので、笑ってしまう。
滅多に出ないこの美術棟から、わざわざ授業時間に高等部の俺が、中等部の校舎に行くのを誰かが見たのだろう。・・・勿論、行きたくて行っている訳ではない。
最悪な気分であの男のいる理科倉庫のドアを叩く。あの男が俺をここへ呼ぶのは、普段人が来ない場所なのと、正規の授業にさえ出席しない俺をわざわざ出向かせる為だ。――俺は美術科の特待生だから、賞の取れる絵を描きさえすれば、授業なんか出なくても学園は文句を言わない。だから夏休みからずっと、作品製作の為と言って美術棟に泊り込んでいる。足が悪くて杖なしではまともに歩けないこともあって、余程の用事でない限り、姿を見せないことから、他の生徒から“仙人”とも呼ばれているらしい。その俺が、人目を忍んで出掛けるのだから、幽霊呼ばわりされるのは、当たり前かなとも思う。
男は俺を招き入れると後ろ手に鍵を閉める。
薄暗い中にお決まりの人体模型や、ホルマリン漬けのカエルや組織模型なんかが、埃をかぶって鎮座している様は、いかにもこの俺に似つかわしい。
俺はまるで検診か何かのように事務的に服のボタンを外し、ズボンを下ろす。男の指示で下着を着けるのを禁じられているので、すぐに全裸だ。嫌なことはさっさと済ませてしまえ!そんな気持ちが、あえて事務的な仕種を作り出す。手錠を嵌められ、流しの蛇口に繋がれるのにも抵抗はしない。男に尻を突き出した格好で、上体を冷たい作業台に預ける。男も至極事務的に、手術用のゴム手袋をはめている。






