馴致1

「冴木くん処置室ね」
看護師に促され、俺はやっと使えるようになった歩行器に掴まり足を引きずるように病室を出る。

個室にいた時は、そのまま処置されていたけど、4人部屋になってから処置室で行われるようになった。
他に患者のいる病室・・・仮令、カーテンが引かれるとはいえ・・・で、尻に指を入れられ便を掻き出されるのは辛い。臭いで、何が行われているかなんて言わずもがなだし、いつまでも馴れない俺が泣く声を聞かれたくないから、別室で処置されるのは嫌ではない。・・・行為自体は逃げ出したいほど嫌だけど。

薬の所為か俺の便秘は頑固で、緩下剤を掛けても自分で排便できなくて、こうして数日ごとに掻き出される処置を受けなければならない。

「今日で4日目?」

体格のいい若い男の看護師が、カルテに目を遣りながら言う。
女の看護師もいるが、何故か精神科(ここ)の看護師はこういうタイプが多い。そして、俺はこのタイプが苦手なのに、どういう訳か摘便の処置はこの男たちに当たってしまう。
「・・・怖い?」
返事のできない俺を和ませようとしているのか、笑顔を向けベッドに腰掛けるよう指示する。
「汚れるといけないから、補装具外すよ?」
右足の膝下装具と、左足の大腿から足先までの装具を順に外すと、痩せ細ったズボンの穿かされていない素足が現れる。この補装具で両足を支えて、歩行器を使ってやっと歩けるようになった俺は、このままの足では立つこともできない。
「・・・く・・・ふ・・・っ」
仰臥した俺の腹部を強めにマッサージする。
「固いね。ちょっと痛いかな?」
言いながら、臍の周りや左下腹部のS字結腸辺りを重点的に圧され苦しげな俺を見つめる。

「じゃあ、次、左側臥位ね。」
嫌と言ってもいつもコトなので、当たり前のように医療用語が出る。
左側を下に横になった俺の右足の脛をベッドガードにベルトで固定するのは、俺が暴れて看護師1人では手に負えなくなるからだ。こんな処置の為に人員を裂くなら、拘束したほうが簡単らしい。
「・・・い・・いあ・・」
上半身をうつ伏せにされて左手首も固定される。右手の利かない俺は、そうされるともう動きようがない。
看護師が施術用のゴム手袋を嵌めるのを見ると、恐怖で顔が歪む。

「・や・・・やぁ・・・」
上手く言葉が出ないことがこんなに歯痒いことはない。ちゃんと喋れるなら、はっきりと拒否できるのに。



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