過去1
身動きもままならない自分に気付いたのは、どの位経ってからだろうか・・・。
コンクリートの床に転がされているらしいのと、直接肌に当たる感触から、全裸に近い恰好なのは分かる。しかし何故、両手を括られ頭の上に繋がれているのか、両膝に棒のようなものを噛まされ股を広げられているのか、分からない。
身体を捩る度、ガチャガチャと金属音がするばかりで、姿勢を変えることさえ出来ない。声を上げようにも、口中に布を詰め込まれその上からテープでぐるぐる巻きにされているので、くもぐった声にしかならない。周りの様子を見たくても、目さえもテープで覆われている。何故俺がこんな目に遭うのか、記憶のどこを探っても心当たりはない。一体、誰がどんな目的でこんなことをするのか・・・。
誰か、俺に恨みを持つ者でもいただろうか。
考えてはみるが、どれも思い当たらない。身代金目的の誘拐だとしても、こんな拘束をするだろうか・・・甚だ疑問でもある。
どうしてこんな所にいるのか、必死で最後の記憶を辿り、漸くその糸口を見つける。
――そう。俺は、高等部・美術科の特待生試験に合格したことを父母の墓前に報告に行ったんだ。
手を合わせ、顔を上げると辺りはもう薄暗くなっていた。12月の中頃ともなれば5時には真っ暗になってしまう。早く帰ろう。みんなが待っている。同居の範行叔父は早めに仕事を切り上げると言っていたし、嫁に行った勢伊子叔母も久し振りに来ると言っていた。友だちも集まるし、今日は騒ぐぞ!そんな気分だった。
それなのに、墓地から出た瞬間――。
タイヤの軋む音と共に、ヘッドライトの強い光に目が眩む――後は、覚えていない。
コツコツと足音が近付いて身構える。
「――いい格好だな・・・。」
男の声だ!
声のする方向を探す俺は、左太腿に針を刺され声にならない悲鳴を上げる。視覚を奪われているせいか、何をされたのかすぐには分からない。そんな俺にはお構いなく、細い指が頬を辿り身体をまさぐってゆく――!これから何が起こるのか、考えもつかない俺は、その気味悪さに身体を左右に振り逃れようとする。
「――ぐっ!」
脇腹へ蹴りが入り、呻くのを男がくっくっと笑う。
「キミも動けなければ、芋虫と同じだな。己の無様な姿を見て、絶望するのも一興だ。」
聞き覚えのある乾いた声が耳元で囁き、睫も眉も目さえも一緒に剥がされるのではないかと思えるほど乱暴に、目の周りに張られていたテープが取り除かれた。――ぼんやりと、焦点の合わない目がやがて正常になり見たものは、勝ち誇ったように立つ痩身の男と、天井と壁の一面に張られた鏡に映る自分の姿だった。
男は、くいと俺の顎を引き上げ、ニヤリと嗤う。
――清野!
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コンクリートの床に転がされているらしいのと、直接肌に当たる感触から、全裸に近い恰好なのは分かる。しかし何故、両手を括られ頭の上に繋がれているのか、両膝に棒のようなものを噛まされ股を広げられているのか、分からない。
身体を捩る度、ガチャガチャと金属音がするばかりで、姿勢を変えることさえ出来ない。声を上げようにも、口中に布を詰め込まれその上からテープでぐるぐる巻きにされているので、くもぐった声にしかならない。周りの様子を見たくても、目さえもテープで覆われている。何故俺がこんな目に遭うのか、記憶のどこを探っても心当たりはない。一体、誰がどんな目的でこんなことをするのか・・・。
誰か、俺に恨みを持つ者でもいただろうか。
考えてはみるが、どれも思い当たらない。身代金目的の誘拐だとしても、こんな拘束をするだろうか・・・甚だ疑問でもある。
どうしてこんな所にいるのか、必死で最後の記憶を辿り、漸くその糸口を見つける。
――そう。俺は、高等部・美術科の特待生試験に合格したことを父母の墓前に報告に行ったんだ。
手を合わせ、顔を上げると辺りはもう薄暗くなっていた。12月の中頃ともなれば5時には真っ暗になってしまう。早く帰ろう。みんなが待っている。同居の範行叔父は早めに仕事を切り上げると言っていたし、嫁に行った勢伊子叔母も久し振りに来ると言っていた。友だちも集まるし、今日は騒ぐぞ!そんな気分だった。
それなのに、墓地から出た瞬間――。
タイヤの軋む音と共に、ヘッドライトの強い光に目が眩む――後は、覚えていない。
コツコツと足音が近付いて身構える。
「――いい格好だな・・・。」
男の声だ!
声のする方向を探す俺は、左太腿に針を刺され声にならない悲鳴を上げる。視覚を奪われているせいか、何をされたのかすぐには分からない。そんな俺にはお構いなく、細い指が頬を辿り身体をまさぐってゆく――!これから何が起こるのか、考えもつかない俺は、その気味悪さに身体を左右に振り逃れようとする。
「――ぐっ!」
脇腹へ蹴りが入り、呻くのを男がくっくっと笑う。
「キミも動けなければ、芋虫と同じだな。己の無様な姿を見て、絶望するのも一興だ。」
聞き覚えのある乾いた声が耳元で囁き、睫も眉も目さえも一緒に剥がされるのではないかと思えるほど乱暴に、目の周りに張られていたテープが取り除かれた。――ぼんやりと、焦点の合わない目がやがて正常になり見たものは、勝ち誇ったように立つ痩身の男と、天井と壁の一面に張られた鏡に映る自分の姿だった。
男は、くいと俺の顎を引き上げ、ニヤリと嗤う。
――清野!






