波間 2 ( 晃Side )

左手を差し伸べて、範行に抱き上げてもらう。

脱衣所の椅子でざっと拭われリビングへ・・・と、誰もいなかった筈なのに制服姿の高校生がソファに座っている。


「いっちん。来てたんだ。」
範行も知らなかったのか、少しビックリした顔をしている。

「日曜日に晃が来てるって聞いたから・・・。行くよって言ったら、拒否されそうかなって勝手に来ちゃった。」
ごめんね・・・。そう言いながら、俺にソファを譲ってくれる。
ダイニングテーブルへ移動して、椅子の背もたれに向いて座るから、俺と向かい合う形になる。

「久し振り、晃。一年ぶり位?」
にっこりと笑ってくれる。でも、俺はそれに答えられなくて目線を外してしまう。

「あき坊、いっちんだよ。」
分かっている。中1からずっと一緒だった。

範行は、いっちんに 「ほとんど喋れないし、動けない」 と説明してる。

「でも、割と元気そうだね。ずっと会いたかったんだ。ボクのこと分かる?」
ソファの肘掛に上半身を預けた俺は、目を伏せたまま頷く。ずっと誰とも会っていなかったから、何をどうすればいいのか分からなくて泣きそうになる。

「いっちん、せっかくだから昼飯食っていくだろ?」
範行が台所から顔を出して誘う。食事は大勢が好きだから、範行はよくこうして誰かにご馳走していた。
「あ、ありがと。ボク、本当に晃の顔見ればよかっただけなんだけど、いいのかな?」
そんな事を言いながら、ちゃっかり相伴に預かる調子の良さは昔のままだ。


台所にいっちんも移動して、リビングに1人残された俺はホッとして、範行が置いていったコップを口に運ぶ。
「水分補給は大事だから。」
そう言われて、事あるごとに飲み物を与えられている。
特に、入浴後の氷がひと欠片入った水は乾いた咽喉に気持ちよくて、いつもより多めに飲めてしまう。


人心地ついたのもつかの間、有り得ない変化に半身を起こした。

「・・・・・・!!!」

風呂上りに冷たい水を飲んだのがいけなかったんだろうか、いきなり膀胱が悲鳴を上げる。

裸の・・・そう、下着も紙パンツも穿かされていない心許ない下腹部に左手を当てる。
いつも、尿意は急に来るから我慢が利かないし、膀胱の容量が小さいらしく、尿意を感じるとすぐに行動しないと間に合わない。


「・・・の・・・のり・・・」
呼んでも、俺の小さな声は、フライパンで何かを炒める音に掻き消されて聞こえないらしい。

一生懸命我慢しているのに、簡単に逼迫してくる!

1人になれてホッとした・・・なんて言わなければ良かった!!





※ 『 波間 2 (範行Side) 』 も読む。 この場面の範行目線です。  2008.06.30  21:27  移動処理



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