道行 3

「この春から引き取ったんだって?」
和紗がアイスコーヒーを出しながら尋ねる。

「うん。結局、範が後見人てことで、あっちで同居。」
「そか、晃は1人暮らししてるんだもんな?」
弘務が思い出したように言うから、晃は頷く。

「だけど、なんか懐かれちゃって・・・ 学校終わるとそのまま俺んちに来るんだよね。」
迷惑そうに言うが、満更でもない様子が伝わってくる。

「で、仕方ないから、宿題見てやったり。夜、範んちに送ってそのまま一緒にメシ食って・・・。」
その後、晃は1人で自宅へ帰るのがここ3ヶ月の生活パターンだ。

「いっそ、そのまま泊まっちゃえば? その方が範さんも安心するだろ。」
未だに晃の叔父・範行とメル友の弘務は、事あるごとに晃の様子を聞いている。

「・・・・・・。」

「でも、大丈夫なのかぁ? お前が1人で ・・・。 メシは、範さんちに行ってるみたいだから心配ないけど。」
一年前、ここに3人で暮らしていた頃と比べたら健康そうに見える晃だが、一緒にいた頃の印象が強い所為か和紗は疑わしそうだ。

「問題ないよ。これでも薬減ってきてるし。」
自分の具合が悪かった頃を知っている2人だから、晃は当たり前のように病気の話をする。
実際、一時期のような不安発作や頑固な不眠からくる精神の不安定さは大分治まってきて、体力的にも精神的にも回復してきているのが見て取れる。

「だけど・・・。」

「夏休みになったから、おれが晃んちに泊まってるもん、そんなに心配しなくてもだいじょうぶだよ?」
隣りで大人しく麦茶を飲んでいた繭結が和紗に答える。
「晃が寝らんない時、一緒に庭見てたりするんだぁ。そうすると、なんか気持ちよくなってすぐ寝ちゃうんだよね。」
蕩けたような表情で兄を見上げる。

「お前がな・・・。」
冷静に突っ込む晃に、和紗と弘務が大笑いをする。

「確かに、前より元気そうだ。」
うんうんと頷く弘務。

「いっそ、繭結と住んじゃえよ。妹が面倒見てくれそうだぞ?」


「それじゃ、自立の意味ないじゃん。」
和紗が笑うから、少しむくれた様に呟く。







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