群青 7
「オレじゃ不満?」
「そういう訳じゃないけど ……。」
いくら、小康を得たといっても根本的にはなんら変わらない晃の病状だ。
繭結と2人住まいのこの家で病を養うのは、さすがに無理がある。
「マスターがこっちに同居ってのも拒否じゃ、退院も危うかったんだろ?」
範行の家に戻れば良いのだが晃は頑として否だったし、退院も強行に主張していたから、周りの皆は困り果てていた。
「…… 範行の所に戻ると、昔に戻っちゃいそうで嫌なんだ。」
誰にも言っていなかった理由をするりと話す。
一番 “壊れていた” 17〜8歳の自分に。
あの頃、世界の中心は範行だった。
しかし、既に自分の力で新しい生活を作り始めた晃に、範行が居ないと生きていられなかった時代に戻ることなど考えられない。
「俺だって成長してるんだよ。」
自分で言っておいて可笑しくなるのか、その細い肩がくすりと揺らぐ。
確かに、あの頃の晃から考えると、随分と大人になってしまったものだ。
それが寂しいのか、範行はよく 「晃がつまらない」 と零している。
「オレたちに言わせたら、そんな風に気を遣うお前が困ったもんなんだけどな。」
溜め息を吐かざるを得ない。
こういう時、晃の頭をくしゃくしゃにしたくなる範行の気持ちが分かる気がする。
「―― でもさ。そんな晃の我儘に付き合えるのは、オレくらいなもんだと思わない?」
片目を瞑ってニヤリとする降三。
彼がこの家に住み込むと名乗りを上げたお陰で、今日の退院となったのだから、いくら感謝しても足りない。
「だけど ……。」
自分の為に仕事を休む降三の気持ちに応えられる自信はない。
「オレがそうしたいんだから、勝手にさせろよ。」
降三が、長い旅行など自分都合でバイトしている範行の店を何ヶ月も休むことは今に始まったことではない。今回は、大学が休みに入るいっちんが降三の穴を埋める手筈になっているから、それでも随分とマシな方だ。
「…… ……。」
どう答えていいのか分からなくて黙り込んでしまう晃。
確かに、空気のように影のようにいつの間にか寄り添ってくれる降三は、一緒に居て負担にならない。しかし、自分の為にそこまでして貰っていいのだろうか ……。
「晃は、自分のことだけ考えて療養してればいいんだよ。」
降三が微笑むから、何も言えなくなる。
「歯痒いな ……。」
さすがに疲れたのか降三に手伝ってもらって床に就くと、トロトロとまどろむ中で晃は呟いた。
※この後・深夜の話も読む → 『 渦 1 』
※翌朝の話に進む → 『 群青 8 』
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「そういう訳じゃないけど ……。」
いくら、小康を得たといっても根本的にはなんら変わらない晃の病状だ。
繭結と2人住まいのこの家で病を養うのは、さすがに無理がある。
「マスターがこっちに同居ってのも拒否じゃ、退院も危うかったんだろ?」
範行の家に戻れば良いのだが晃は頑として否だったし、退院も強行に主張していたから、周りの皆は困り果てていた。
「…… 範行の所に戻ると、昔に戻っちゃいそうで嫌なんだ。」
誰にも言っていなかった理由をするりと話す。
一番 “壊れていた” 17〜8歳の自分に。
あの頃、世界の中心は範行だった。
しかし、既に自分の力で新しい生活を作り始めた晃に、範行が居ないと生きていられなかった時代に戻ることなど考えられない。
「俺だって成長してるんだよ。」
自分で言っておいて可笑しくなるのか、その細い肩がくすりと揺らぐ。
確かに、あの頃の晃から考えると、随分と大人になってしまったものだ。
それが寂しいのか、範行はよく 「晃がつまらない」 と零している。
「オレたちに言わせたら、そんな風に気を遣うお前が困ったもんなんだけどな。」
溜め息を吐かざるを得ない。
こういう時、晃の頭をくしゃくしゃにしたくなる範行の気持ちが分かる気がする。
「―― でもさ。そんな晃の我儘に付き合えるのは、オレくらいなもんだと思わない?」
片目を瞑ってニヤリとする降三。
彼がこの家に住み込むと名乗りを上げたお陰で、今日の退院となったのだから、いくら感謝しても足りない。
「だけど ……。」
自分の為に仕事を休む降三の気持ちに応えられる自信はない。
「オレがそうしたいんだから、勝手にさせろよ。」
降三が、長い旅行など自分都合でバイトしている範行の店を何ヶ月も休むことは今に始まったことではない。今回は、大学が休みに入るいっちんが降三の穴を埋める手筈になっているから、それでも随分とマシな方だ。
「…… ……。」
どう答えていいのか分からなくて黙り込んでしまう晃。
確かに、空気のように影のようにいつの間にか寄り添ってくれる降三は、一緒に居て負担にならない。しかし、自分の為にそこまでして貰っていいのだろうか ……。
「晃は、自分のことだけ考えて療養してればいいんだよ。」
降三が微笑むから、何も言えなくなる。
「歯痒いな ……。」
さすがに疲れたのか降三に手伝ってもらって床に就くと、トロトロとまどろむ中で晃は呟いた。
※この後・深夜の話も読む → 『 渦 1 』
※翌朝の話に進む → 『 群青 8 』






