群青 6

繭結が身支度を整えて居間に戻ると、ベッドに腰掛けた晃の髪を範行がドライヤーで乾かしていた。
既にパジャマに着替え、その上から細かい縞の浴衣を着ている。

「晃、それ昔の人みたいだね。」
本来ならおかしな取り合わせだが、髪を短くしている所為か、晃が着ると昔の書生のような雰囲気になる。
「なんだか、パジャマだけじゃ寒くて ……。」
ストーブの点いた部屋なのにそう笑う。
「お前ら、遊んでて良く温まらなかったんじゃないのか?」
「そんなことないよ! オレ、ちゃんと晃の体洗ったもん!!」
範行に疑惑の目を向けられて、繭結はついムキになる。
「―― だよな? 範行はヤキモチやいてるんだよ。自分が風呂場に呼ばれなかったから ……。」
な? と、範行を見上げるから、無言で余計にガシャガシャと髪の毛を掻き回されて 「イタイイタイ」 と楽しそうに悲鳴を上げる。

「久し振りに、風呂に入れてよかったよ …… ありがとな。」
「だろ? 晃がいいって言ってるんだからいいんだよ。範ちゃんの意地悪〜!」
「なんだと? ちび助、生意気だぞ!」
礼まで言われてすっかり機嫌を直して悪態まで吐くから、範行と追いかけっこが始まってしまう。
小学5年生の繭結を半ば本気で捕まえると、プロレス技をかけてドタバタと部屋の中を転げまわる38歳。繭結も噛み付いたり応戦するから、いい遊び相手ではある。


「晃、ほら水分補給。」
降三に薄いイオン飲料を勧められて素直に口にする。

「ねぇ晃。もしも後で具合が良かったら、宿題見てよ?」
上気した顔で、範行の手を逃れてきた繭結が晃の膝に取り付いて強請るように顔を見上げる。
「…… ん。少し休んだらな ……。」
「やったぁ!」
「あ、コラ繭結! また晃にそんなこと! 後でなんて言わずに今オレが見てやるよ。」
「範ちゃんじゃヤだよ。晃がいいって言ったんだから、いいの!」
兄が健康を取り戻したと信じている繭結の無邪気な言葉に、晃は至極曖昧な顔をする。
「っとに、晃、晃なんだから。」
溜め息混じりに範行が肩を落として見せる。


「トムとジェリーみたいだよな。」
そんなことを言いながら賑やかな2人を見ていた晃だったが、ふと真面目な顔になる。

「降三 ……。」
「ん?」
「本当に、いいの?」
「何が?」
降三が普通な顔をして聞き返すから、晃も気が削がれたのか一瞬口を閉ざす。

「だって …… 俺の面倒看るって ……。」








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