群青 8
翌朝。
晃が目覚めたのは、繭結が学校へ出かけた後だった。
「俺、すげー寝てた?」
自分で苦笑するほど熟睡したのだろう。縁側で洗濯物を干している降三に問いかける。
「昨日、夕方から9時間? その後一回起きて、また5時間近く寝てたんじゃないか? 今朝、繭結が『一日寝ちゃうんじゃないか』 って心配してたぞ。」
揺り起こそうとしても眠り続ける晃に困惑していたと答える。
本人の希望で自室から居間へベッドを移動したものの、騒がしくてゆっくり休めないのでは …… 口には出さないが誰もが思っていた。しかし、それは杞憂だったようだ。
「昨日、あいつの宿題見てやらなかったから怒ってたろ?」
妹をこの家に引き取ってから、繭結の勉強は晃が見ている。成績の芳しくない子だから、晃の心配は尽きることがない。
「大丈夫。マスターが見てやってたし。繭結も、朝になっても眠りっぱなしじゃ怒る気にもならなかったろうよ。」
あまりに良く眠るから、息をしていないんじゃないか …… 何度か繭結と2人で晃の寝息を確認していたのだと笑う。
「オチオチ寝てらんないな。」
寝ている間、そんなことが行われていたなんて …… と苦笑する。
顔色も良く、食欲もあるらしい晃は、ベッド脇のソファで1人食事を摂った後、そのままベッドには戻らず縁側で日向ぼっこを始める。
膝の曲がらない左足を投げ出して右足だけ胡坐をかくいつものスタイルの晃は、冬の柔らかい陽を浴びて気持ちよさそうだ。
パジャマの上に浴衣を着、その上に丹前を着ている所為もあるのか、この家が建てられた時代の人ような錯覚に陥る。
「晃ぁ、お帰り〜。」
朝の挨拶よりも先に、帰宅を祝う声が庭の方から聞こえる。
コツコツと縁側のガラス戸を叩く音と共に懐かしい顔が顔を出す。
「あ、いっちん。上がれよ。」
懐かしい親友の出現に、華やいだ様子の晃。
「病院にいた頃より、顔色いいんじゃない?」
玄関には廻らずそのまま上がり込んで、安心したと笑う。
大学4年のいっちんは、既に卒論を終え、春からの法科大学院入学を控えている。
ぽっかりと空いたこの2ヶ月ばかりは、旅行とバイトに明け暮れる予定らしい。
「降三がこっちに来ちゃったから、いっちんにバイトのシワ寄せが行っちゃってるんだろう?」
自分の為に影響が出てしまうのは申し訳ない …… そんな顔をする。
「全然平気。どうせヒマだから丁度いいカンジだよ? それよりも、ボクは晃が元気そうってのが嬉しいんだけど。」
「―― だろ? なのに、病人扱いで寝巻きのままでいいとか言うんだぜ? 非道いよな。」
一日中、寝巻きを着せられるのは気に入らない …… 一転、ここぞとばかりにそんな不満を漏らす。
「だって、着替えちゃったら、もうベッドで休まないとか言うだろ? 我儘言って退院したのに、具合悪くなってすぐ逆戻りじゃ困るのはお前じゃん?」
お茶の支度を持って戻って来た降三は、困ったような嬉しいような複雑な顔をしている。
それでも、入院中の様子からかなりの覚悟を持って迎えた晃が、思った以上に元気で安心しているのは、誰よりも降三かもしれない。
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晃が目覚めたのは、繭結が学校へ出かけた後だった。
「俺、すげー寝てた?」
自分で苦笑するほど熟睡したのだろう。縁側で洗濯物を干している降三に問いかける。
「昨日、夕方から9時間? その後一回起きて、また5時間近く寝てたんじゃないか? 今朝、繭結が『一日寝ちゃうんじゃないか』 って心配してたぞ。」
揺り起こそうとしても眠り続ける晃に困惑していたと答える。
本人の希望で自室から居間へベッドを移動したものの、騒がしくてゆっくり休めないのでは …… 口には出さないが誰もが思っていた。しかし、それは杞憂だったようだ。
「昨日、あいつの宿題見てやらなかったから怒ってたろ?」
妹をこの家に引き取ってから、繭結の勉強は晃が見ている。成績の芳しくない子だから、晃の心配は尽きることがない。
「大丈夫。マスターが見てやってたし。繭結も、朝になっても眠りっぱなしじゃ怒る気にもならなかったろうよ。」
あまりに良く眠るから、息をしていないんじゃないか …… 何度か繭結と2人で晃の寝息を確認していたのだと笑う。
「オチオチ寝てらんないな。」
寝ている間、そんなことが行われていたなんて …… と苦笑する。
顔色も良く、食欲もあるらしい晃は、ベッド脇のソファで1人食事を摂った後、そのままベッドには戻らず縁側で日向ぼっこを始める。
膝の曲がらない左足を投げ出して右足だけ胡坐をかくいつものスタイルの晃は、冬の柔らかい陽を浴びて気持ちよさそうだ。
パジャマの上に浴衣を着、その上に丹前を着ている所為もあるのか、この家が建てられた時代の人ような錯覚に陥る。
「晃ぁ、お帰り〜。」
朝の挨拶よりも先に、帰宅を祝う声が庭の方から聞こえる。
コツコツと縁側のガラス戸を叩く音と共に懐かしい顔が顔を出す。
「あ、いっちん。上がれよ。」
懐かしい親友の出現に、華やいだ様子の晃。
「病院にいた頃より、顔色いいんじゃない?」
玄関には廻らずそのまま上がり込んで、安心したと笑う。
大学4年のいっちんは、既に卒論を終え、春からの法科大学院入学を控えている。
ぽっかりと空いたこの2ヶ月ばかりは、旅行とバイトに明け暮れる予定らしい。
「降三がこっちに来ちゃったから、いっちんにバイトのシワ寄せが行っちゃってるんだろう?」
自分の為に影響が出てしまうのは申し訳ない …… そんな顔をする。
「全然平気。どうせヒマだから丁度いいカンジだよ? それよりも、ボクは晃が元気そうってのが嬉しいんだけど。」
「―― だろ? なのに、病人扱いで寝巻きのままでいいとか言うんだぜ? 非道いよな。」
一日中、寝巻きを着せられるのは気に入らない …… 一転、ここぞとばかりにそんな不満を漏らす。
「だって、着替えちゃったら、もうベッドで休まないとか言うだろ? 我儘言って退院したのに、具合悪くなってすぐ逆戻りじゃ困るのはお前じゃん?」
お茶の支度を持って戻って来た降三は、困ったような嬉しいような複雑な顔をしている。
それでも、入院中の様子からかなりの覚悟を持って迎えた晃が、思った以上に元気で安心しているのは、誰よりも降三かもしれない。





