05:繋いだ手
庭に実のなる木があるって、羨ましい …… 木村が言うから、そんなもんかって思った。
「なのに、なんで柿取らないんだよ? もったいないじゃん。」
自分のウチなら、兄弟で柿の木一本じゃ足りないくらい食い尽くしちゃうぞ? …… そう言って登るのを縁側から眺める。
本当は、とても甘い種類なんだって、時々範行が取ってくれるけど、自分で収穫して食べるほどの熱意はないから、ゆくゆくはカラスや鳥の餌だ。
そういう意味では、贅沢なんだろう。
「なぁ、晃。コレって、樹齢どのくらい?」
丁度、肩の高さで二股に幹が分かれている所があって、そこに立ち上がって楽しそうに聞いてくる。
「―― さぁ … じいさんがいた頃だから、かなり昔?」
祖父の兄がここに住み始めた頃か、もしくは隣の本宅が出来た頃か …… 俺に年数を数える習慣はないし、分からないことは叔父の範行に聞けば大概分かるから、木の年齢なんて気にしたことがない。
「じゃ、少なくとも50年は経ってるのかな? 晃、何か持って来いよ。カゴとかバケツとか、取ったの入れるヤツ。」
俺からちゃんとした答えが返ってくるの、はなから期待してないのか、木村は一人で納得して指示を出す。
―― 入れるものって …… 少し考えて台所からザルを持って出ようとしたら、すかさず 「もっとでっかいの!」 って叫ばれる。
「だって、こ〜んなに生ってるんだぜ?」
まるで、自分がやり遂げたように誇らし気だから笑える。
結局、物置からバケツを持って行ったら、嬉しそうに次々もいだ柿を入れていく。
「全部持って行ったらいいよ。」
見上げて言ったら、「弟たちが喜ぶ」 ってニコーと笑う。
「晃も上がって来いよ。気持ちいいぞ。」
沢山入ったバケツを受け取ってヨロヨロと下に置いたら、そんなことを言う ―― ムリだろ。
「大丈夫。おれがちゃんと支えてやる。」
ほら …… 肉体系のバイトで肉厚になった手を差し出す。
「―― ん。」
かなり迷ったけれど、恐る恐る左手を出したらギュッと力強く握られて、登るというより抱き上げられて、木村がいる枝の分かれ目に落ち着く。
「きっもちいいだろ〜!?」
ご機嫌な顔で夕日を眺めるから、つられて同じ方向を見る。
「…… な? いいだろ?」
俺のウチなのに、すっかり自分のもののような口振りがらしい。
「なんだかんだで、また冬になるな。」
横顔が、オレンジ色に照らされて綺麗だ。
「いい加減、手離せよ。」
いつまでも俺の左手を握っているので振り払おうとしたら、バキッと大きな音がして寄りかかっていた枝がそのまま折れて、木村ごと地面に落ちて、巻き添えで俺も ……。
「痛ってぇ〜!! 大丈夫か!?」
下になったのは木村なのに、慌てて起き上がって俺を気遣う。
周りには、折れてバラバラになった枝が散乱している。
俺は、ただビックリして見上げるばかりだ。
「―― 俺の所為?」
俺が、無理に手を振り払ったからバランスが崩れたんだろうか?
「…… じゃなくて。なんか、ちっちゃい頃田舎のおじーちゃんに 『柿の木は折れやすいから登るな』 って言われた気がするの思い出した。」
今更だけど …… と頭を掻いている。
「だから、範は登らずに取るんだ ……。」
柿取り用の竿を指差す。
「なんだ、あんな便利なものあったんだ。」
失敗したなぁ …… 笑いながら、手を引いて立ち上がらせる。
「怪我、なさそうで良かった。」
服についた土や葉を払い落としてくれる。
「せっかくだから、ウチん中入って食お?」
柿がたんまり入ったバケツを持って、手を差し伸べる。
「…… 俺、硬いの好き。」
「そう? おれは結構なんでもOK〜。」
逆光でよく見えないけれど、きっといつもの顔で笑っている。
左足を引きずり、繋いだ手に従ってゆっくりと歩き出す。
「冷えてきたな。」
急に短くなった日を惜しむように呟くのをなんとなく聞いた。
2009.10.14 09:19:46 作成
晃23歳・秋
<純愛BL10のお題> お題配布元: 裏・純愛少年 さま

にほんブログ村 ←来訪記念にポチッと頂けると励まされます。
「なのに、なんで柿取らないんだよ? もったいないじゃん。」
自分のウチなら、兄弟で柿の木一本じゃ足りないくらい食い尽くしちゃうぞ? …… そう言って登るのを縁側から眺める。
本当は、とても甘い種類なんだって、時々範行が取ってくれるけど、自分で収穫して食べるほどの熱意はないから、ゆくゆくはカラスや鳥の餌だ。
そういう意味では、贅沢なんだろう。
「なぁ、晃。コレって、樹齢どのくらい?」
丁度、肩の高さで二股に幹が分かれている所があって、そこに立ち上がって楽しそうに聞いてくる。
「―― さぁ … じいさんがいた頃だから、かなり昔?」
祖父の兄がここに住み始めた頃か、もしくは隣の本宅が出来た頃か …… 俺に年数を数える習慣はないし、分からないことは叔父の範行に聞けば大概分かるから、木の年齢なんて気にしたことがない。
「じゃ、少なくとも50年は経ってるのかな? 晃、何か持って来いよ。カゴとかバケツとか、取ったの入れるヤツ。」
俺からちゃんとした答えが返ってくるの、はなから期待してないのか、木村は一人で納得して指示を出す。
―― 入れるものって …… 少し考えて台所からザルを持って出ようとしたら、すかさず 「もっとでっかいの!」 って叫ばれる。
「だって、こ〜んなに生ってるんだぜ?」
まるで、自分がやり遂げたように誇らし気だから笑える。
結局、物置からバケツを持って行ったら、嬉しそうに次々もいだ柿を入れていく。
「全部持って行ったらいいよ。」
見上げて言ったら、「弟たちが喜ぶ」 ってニコーと笑う。
「晃も上がって来いよ。気持ちいいぞ。」
沢山入ったバケツを受け取ってヨロヨロと下に置いたら、そんなことを言う ―― ムリだろ。
「大丈夫。おれがちゃんと支えてやる。」
ほら …… 肉体系のバイトで肉厚になった手を差し出す。
「―― ん。」
かなり迷ったけれど、恐る恐る左手を出したらギュッと力強く握られて、登るというより抱き上げられて、木村がいる枝の分かれ目に落ち着く。
「きっもちいいだろ〜!?」
ご機嫌な顔で夕日を眺めるから、つられて同じ方向を見る。
「…… な? いいだろ?」
俺のウチなのに、すっかり自分のもののような口振りがらしい。
「なんだかんだで、また冬になるな。」
横顔が、オレンジ色に照らされて綺麗だ。
「いい加減、手離せよ。」
いつまでも俺の左手を握っているので振り払おうとしたら、バキッと大きな音がして寄りかかっていた枝がそのまま折れて、木村ごと地面に落ちて、巻き添えで俺も ……。
「痛ってぇ〜!! 大丈夫か!?」
下になったのは木村なのに、慌てて起き上がって俺を気遣う。
周りには、折れてバラバラになった枝が散乱している。
俺は、ただビックリして見上げるばかりだ。
「―― 俺の所為?」
俺が、無理に手を振り払ったからバランスが崩れたんだろうか?
「…… じゃなくて。なんか、ちっちゃい頃田舎のおじーちゃんに 『柿の木は折れやすいから登るな』 って言われた気がするの思い出した。」
今更だけど …… と頭を掻いている。
「だから、範は登らずに取るんだ ……。」
柿取り用の竿を指差す。
「なんだ、あんな便利なものあったんだ。」
失敗したなぁ …… 笑いながら、手を引いて立ち上がらせる。
「怪我、なさそうで良かった。」
服についた土や葉を払い落としてくれる。
「せっかくだから、ウチん中入って食お?」
柿がたんまり入ったバケツを持って、手を差し伸べる。
「…… 俺、硬いの好き。」
「そう? おれは結構なんでもOK〜。」
逆光でよく見えないけれど、きっといつもの顔で笑っている。
左足を引きずり、繋いだ手に従ってゆっくりと歩き出す。
「冷えてきたな。」
急に短くなった日を惜しむように呟くのをなんとなく聞いた。
2009.10.14 09:19:46 作成
晃23歳・秋
<純愛BL10のお題> お題配布元: 裏・純愛少年 さま
にほんブログ村 ←来訪記念にポチッと頂けると励まされます。






